流行の痩せ薬

最近、山中伸弥教授の iPS細胞由来の治療が実用段階に入った というニュースが出ていました。

このニュースを見ていて、ふと感じたのは薬の進化が一気に進んできた時代 になったということ。

本来は病気を治す目的が「薬」でしたが体型や食欲まで変える「薬」が最近もてはやされていますね。

その代表が、今回ブログで取り上げる「痩せ薬」。特に一度は名前を聞いた事があるかも知れませんが マンジャロ(チルゼパチド) をはじめとするGLP-1系の薬です。

きっかけは巨大製薬会社の参入

この流れを決定的にしたのが巨大製薬会社による開発競争です。

  • ノボノルディスク:セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ)

  • イーライリリー:チルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)

特にイーライリリーの薬は、従来の薬より大きく体重が落ちるデータが出たことで「ダイエット」ではなく肥満治療という医療分野を一気に拡大させた と言われています。

つまり今回のブームは美容トレンドやいつもの胡散臭いダイエット法ではなく、製薬産業が本気で参入した結果です。

そして重要なのはここからで、これは始まりに過ぎません。

先進国にとって肥満は最大級の市場です。今後さらに強力・長時間作用・副作用軽減など次世代薬が継続的に出てきてもおかしくないですよね。ひと昔前の中国産の下剤入りの痩せ薬とは方向性が変わりました。

製薬会社が抗肥満薬に参入の絵


そもそも痩せ薬とは

まず誤解されやすいですが、これは脂肪燃焼剤ではありません。

運動しなくても脂肪を燃やす薬でも、代謝を上げる薬でもありません。

食欲を調整する薬です。後述の「勝村目線」でお伝えしますが良い体(ナイスバディ)になる薬ではありません。


GLP-1の仕組み

食事をしたときに「もう食べなくていい」と脳へ伝えるホルモンが GLP-1。本来の流れは下記です。

・食事をする→腸が栄養を感知→GLP-1が分泌→満腹感が出る→食事が止まる

しかし現代は
・食事が柔らかい
・糖質中心
・早食い
などの影響で、この信号が弱くなりやすいです。

そこでGLP-1薬はこの満腹信号を強制的に増幅します。

結果として体に起きることは下記の3つ。

  • 食欲が弱くなる

  • 胃の動きがゆっくりになる(少量で満腹)

  • 血糖の乱高下が減る(空腹が来にくい)

つまり食欲を我慢するのではなく食べなくても大丈夫な状態にする事がGLP-1薬の本質といわれます。

GLP1をわかりやすく絵にしている

マンジャロはここにさらに別のホルモン作用(GIP)が加わるため、満腹信号がより強くなります。


痩せ薬の問題点

ここはトレーナーとして付け加えないといけないところかと思います。

この薬は確かに体重を落とします。ただし体は脂肪だけを落せません。

多くの場合

  • 脂肪

  • 筋肉

  • 水分

が同時に落ちます。(もちろんトレーニングや食事を気を付けても筋肉等が落ちるケースがありますが割合の問題です)

で、食欲が減り必要な栄養素も摂れなくなり、さらに薬の副作用も重なり、

  • 基礎代謝低下

  • 倦怠感

  • 冷え

  • 止めた後の反動→いずれ薬も効かなくなります

なので「副作用」プラス作用の延長で起きる現象も重なります。


痩せ薬の捉え方

では薬物のCMのように「ダメ!絶対!」なのかというと、そう単純ではなく使い方の問題ではないかと思います。

実際BMI30以上の肥満者は美味しそうな食べ物に対してドーパミンD2受容体の密度が薬物依存者と同じように低下するといわれてもいます。そういう方に「やる気の問題だ」「気合いだ!」というのもナンセンスであり、

食習慣を立て直すための補助やダイエット開始時にブーストをかけスムーズに成功させる

というイメージでなら肥満を改善したい方はありかと考えます(競技選手の使用はダメです)

根本というか最終的には日常の生活を改善することが必須であり、その修正する“きっかけ”として使うと意味が出るかと考えます。


勝村目線:痩せることと美しさ

勝村目線の画像ここからは僕自身のトレーナーとしての考え方になります。

イザベルカーロの画像

上の画像のイザベル・カロは、13歳から深刻な拒食症で「痩せすぎ」に警鐘を鳴らし続けたフランスのファッションモデルです。この2007年の広告キャンペーン「No Anorexia」で、骨が浮き出た自身のヌードで痩身の恐ろしさを伝え、行き過ぎた細さは美ではないことを世界に示し、28歳で亡くなりましたが、その活動はモデルの健康を守るための法規制に大きな影響を与えたとされています。
世の中では「痩せれば綺麗になる」という認識が強いですが、上記を見ると実際は違いますよね。体が締まっていて綺麗に見えるのと単なる栄養失調とは見え方が明らかに違います。

正しくは太り過ぎも美しさを損なうし、痩せ過ぎも同じく損なうです。

人が綺麗と感じる要素は体重だけでなく、姿勢や肌の艶や活力、内面から滲み出るもの、健康な肉体など単に体重さえ落とせば良い、というものではないですよね。

極端な減量で栄養状態が崩れると見た目の評価はむしろ落ちます。

行き過ぎた体作りは一般目線から外れやすくなりますよね。トレーニングし過ぎると下記のようになっちゃう!と考える女性もいますが、普通はなりたくてもなれないのでご安心を。。。

女性ビルダーのトップのアイリスカイルの画像

女性ビルダーのトップのアイリス・カイル

話しを戻して痩せ薬ですが、「体重は無意味だ!」というつもりは全くないのですが、ただ体重は指標のひとつにしか過ぎず、それだけでは問題は解決しない。という事です。

痩せることは美しさの一部ではあるものの、美しさそのものではありません。

これは僕自身のあくまで持論ですが、

自身の普段の過ごし方、生き方、考え方が、その個人の身体から滲み出るものに通じます。ストイックな生き方をしている人はストイックなオーラが出ています。宝塚歌劇団のひとは宝塚っぽく、ヤクザの人はヤクザっぽく、オタクの人はオタクっぽく見えるように怠惰な人は怠惰な雰囲気を醸し出します。

体重ではなく、身体は生き方の結果として現れるものここを外さないことが本質だと考えます。