遺伝的要因が与えるトレーニング効果の影響

2022/01/15 │ ブログ

トレーニングを行えば当たり前に筋肉がつく。今までトレーニングを継続的に行っていないひとはトレーニングを行なえば筋肉は皆平等につくものだ!自分も筋トレに冒頭したらボディビルダーのような体になる!と当たり前のように思っている事でしょう。ただ長年トレーニングを行っている人からするとボディビルダーのような体になれるものならなってみろ!と思われる方も多いです。人間は不必要なレベルまで筋肉をつけるのは難しく現在の環境に応じて適応する一環として筋肉が肥大します。ただいくら環境(トレーニング刺激)を上げようとしてもベンチプレスを漸進的に1トンまで増やせるわけがなく人には限界がありその限界値は人によって違うという事です。マッチョがトレーニングしている写真

限界値が人によって違うのはなんとなく理解できるのですが1回のトレーニングも同一条件であっても人によって筋肥大率などの効果が違う、という事は理解されていない方が多いです。

パーソナルトレーニングを行なうにあたってもトレーナーの力量により変わるケースもありますが持っている能力以上のものを引き出す事はできません。とんでもない理論でのトレーニングを提供するトレーナーは別として運動生理学や解剖学などをしっかり把握し誠心誠意指導を行っているトレーナーでしたら各トレーナーによるクライアントの結果の差は数パーセント程しか変わらなかったりします。その事を念頭に置いて、この記事では一回の同一条件下でのトレーニングによってどのくらい個人差が影響するのかをご説明させて頂きます。

ボディメイクは人と競うものではなく自身の可能性を最大限に引き出し、いかにきれいに変化させるかが重要ですので例え自身のトレーニングの反応が悪かったとしてもここでご紹介するアプローチの仕方を変えるなど臨機応変に対応してください。

個別性の原則

パーソナルトレーナーとしてトレーニングを提供する時に当たり前のように理解しておかないといけないのがトレーニングの原理原則です。

トレーニングの原理原則は3原理5原則から成り立っており、原理は過負荷(オーバーロード)の原理、特異性の原理、可逆性の原理で成り立っており、原則は、全面性の原則、意識性の原則、漸進性の原則、反復性の原則、個別性の原則の5つでありこの個別性の原則こそが遺伝的要因も含んだ原則となります。

個別性の原則とは個人によって性別、年齢、身体組成、体力、性格、ポテンシャル、トレーニングの目的など全て同じという人は誰1人いません。そのため、トレーニング内容も目的にあわせて各個人に合ったトレーニング内容を提供しなければいけない、といったものですがこの提供されたトレーニングに対する反応も各個人によって大きな差があります。

トレーニングに対する筋肥大率の差

一般的には強度の高いトレーニングを行なえば皆同じようなパーセンテージでトレーニング効果を発揮すると思われがちですがそこにはかなり大きな落とし穴があります。実際同程度のトレーニングによる個人差があるのかというとアメリカで沢山の対象者を基に1回の高強度トレーニングでの筋肥大率を測定したデータでは

1RM80%での高強度での筋肥大率 0,03%~0,26%
加圧トレーニングでの筋肥大率 0,04%~0,22%

程度のトレーニングであっても約5倍から8倍程肥大率の差がみられた。

なので同じように最先端のトレーニングを数か月行っても遺伝的要因で反応しずらい人と凄く反応する人とでは筋肉の付き方、筋力の向上は5~8倍もの差が出てもおかしくないという事です。

よく「自分は向いていない」と諦める人を「根性がない!」などと叱咤激励するケースがありますが本当に向いていないというケースも充分に考えられます。ただ遺伝的要因も沢山の可能性を秘めていますので例えば筋力発揮に向いていなくても筋肥大はしやすかったり筋力発揮、筋肥大がしにくくても持久力が秀でている、体脂肪が減るスピードが非常に速い、など各個人によって色々な可能性を秘めているという事になります。解りやすくいうと小学校時代などに同じように授業を受け、同じように真剣に取り組んだとしても全員がテストで同じ点数にならないのと同じです。そして人によって理科が得意な人、英語が得意な人など各個人に差が出来ます。逆にいうと皆一緒ではなくそういった差が社会全体をバランスよく成り立たせているといっても過言ではありません。

しかし遺伝的要因を前面に押し出すと、逆の極端な考えで「遺伝的に劣っていると努力しても意味がない」と捉えるケースが出てきます。

日本は古くから「努力は才能を凌駕する」「99%は努力だ」というような考え方が根付いています。人は皆「人としての価値は平等」ではありますが世界中の人全員が同じ立ち位置から平等にスタートを切れる!というと事は絶対にありませんよね。生まれながらにして大小あれどスタートする位置も努力によって積み重なるものも差があります。例えばウサイン・ボルトより質の高い練習を積めば皆100m10秒を切れるでしょうか?大谷翔平選手より良いトレーニングを行えば160km/h以上の球を投げメジャーで1シーズン40本以上のホームランが打てるでしょうか。僕はまず無理だと思います。もちろん彼らも人並外れた努力もしている事でしょう。ただそれも発揮するだけの才能があってこその努力となります。九官鳥に言葉を教えれば喋れますが猫に言葉を教えても喋れないのと同じで元々持って生まれた才能は色んな場面で自然と受け入れられてはいるものです。ただ平等論が行き過ぎると人間皆平等だから全てが同じなはずだ!と感情的になってしまわれることも多々あります。

人がランニングしている写真

もちろん遺伝的要因が全てではなく周りの環境などの環境的要因もその人を形成する上で大きなウエイトを占めます。いくら遺伝的に優れていてもその才能を開花させること(努力する)を行わなければ一生埋もれたままとなります。前述のボルト選手だって陸上競技と出会わず勉強ばかりして育っていればそこそこ運動の得意なひとで終わっていたかもしれないですし大谷翔平選手も野球が盛んじゃない国に産まれていれば全く才能を開花させずに終わったかもしれません。

ただ面白い事に、自分の能力が優れているものは興味を示しやすく、「面白い」と感じやすかったり自然と努力を惜しまず継続するようです。逆にいくら小さい頃から親が期待して習い事をさせたとしても本人にその能力がないのであれば面白さを感じず自然と辞めてしまうようです。そういったことからも親は子供の可能性を引き出すために色々な事に挑戦させることは良い事です。その中で興味を持つもの、反対しても続けたがるものを継続させることが本人の能力を最大限に伸ばすという事ではないでしょうか。

さて話をトレーニングに戻しトレーニングに対する筋肥大の個人差は冒頭のデータでも述べたように非常に大きいです。まず、トレーニングをしていない人同士でも筋肉量にちがいがあるのは分かりやすいと思います。遅筋、速筋の筋線維のタイプの比率にも個人差があり、それに関連するACTN3の型でR/R型とX/X型ではトレーニングを行っていなくてもR/R型のを持つ人の方が筋肉量が多いというデータがあります。このような個人差の約80%が遺伝的要因で説明可能です。身長と体重も遺伝的要因の影響を強く受けますがそれを考慮しても体重に対する除脂肪体重の差の約50%が遺伝的要因で説明がつきます。

データによるトレーニング効果の差

そして上記の元々の個人差からさらに筋力トレーニングを行うと個人差はさらに大きく開きます。

冒頭ではアメリカの研究で1回の高強度トレーニングでの筋肥大率を測定したデータでは個人により0,03%~0,26%の筋肥大率の差があった事をご説明しましたがそれ以外にも500人以上を対象とした大規模なアームカール(肘屈曲運動)の実験では1回の筋肥大率ではなく3か月(12週)行って出した結果があります。こちらの結果は平均で上腕二頭筋が19%の筋肥大を確認できました。ただ一番肥大率の高かった人では59,3%と平均の約3倍の伸び率を示し、最大挙上重量(1RM)では平均54%アップとなりましたがこちらも一番伸び率の高かった人では250%アップとなり平均より4,6倍もの伸び率を示しました。一方最も効果の出なかった人では12週トレーニングを行ったにもかかわらず筋量は減少し挙上重量も全く伸びなかったという結果となりました。

遺伝子以外の要因は?

上記の腕のトレーニングを対象とした結果以外にも脚のトレーニングを対象とした研究結果も同じような結果のバラつきを示しました。そこで考慮されるのが被験者の年齢や性別などですが、もちろん若い被験者の方が伸び率が平均して高くはなりますが高齢者であっても大きな伸びを示す被験者や若くても全く伸びがみられない被験者も一定数みられ年齢や性別により平均より優位に働くことはあってもそれだけが原因ではないです。

年齢や性別以外では栄養状況の違いが大きな差を産むのではないか!?という事もあり栄養の摂取もしっかり管理した状況下でトレーニングによる徐脂肪体重の差を比較した実験もありますがそちらも上位と下位では大きく、徐脂肪体重の増え幅が上位グループと下位グループで約4倍もの差がついた結果となりました。もともと持っている遺伝的な要因によりトレーニングによって得られる効果の個人差がかなり大きくなるというという事が解りますね。

結果をどう捉えるか

現時点でトレーニングなどの運動に関連する遺伝子で遺伝子多型による差が認められているものはACTN3やACE遺伝子などごく少数の遺伝子でありその影響も上記で示した結果のように大きな影響を与えるものではありません。運動に関連する遺伝子は今現時点でも約200種類は存在し、その組み合わせによって様々な個人差が出現する事となります。

何十年も先になるとその内容も解明されるかも知れませんが現時点では実際にトレーニングを行ないトレーニング自体、もしくはそのトレーニング方法が自身に合っているのかを結果として確認する他ありません。ただ筋力トレーニングによる伸びが悪いからといって全ての運動に向いていないという訳ではなく持久力に優れていたり細かな技術が必要とされるスポーツに向いているという可能性もありますので自身の可能性を最大限に発揮できるものをみつけ自身の力を伸ばしてあげる事が大切ですね。遺伝子と人の写真

努力が才能を開花させる

差別等に繋がる問題もあり、遺伝的要因での個人差を努力で全てカバーできる!という考えが浸透しやすく皆から受け入れられてやすい世の中となっております。ですがイソップ寓話の「ウサギとカメ」のように才能があっても、なまけて努力を惜しむと努力したものに抜かれる事は実際にもよくある事です。

ただウサギとカメにしてもウサギが必死に努力をして準備も万端にしてカメと競争すれば言わずもがなウサギの圧勝となるでしょう。そしてウサギが油断したとしてもカメも同様に何の頑張りも起こさなければ結果はウサギの勝ちとなります。努力(練習)が占めるパフォーマンス向上率の割合は25%以下という結果が出ていますが努力(練習)は絶対条件となります。しかし才能に恵まれて努力している人を全く才能に恵まれていない人が2倍努力(練習)しても努力のみでひっくり返すことは不可能といってよいでしょう。

決して間違ってはならないのは、努力する事に意味がないのではなく、自身の体質を見極め努力して自分なりに可能性を最大限に引き出す事によって今の自分より向上できる。という事です。その伸びしろや限界値は皆一緒ではなく遺伝的要因が大きく影響はします。いくら才能があってもやらなければ秘めた才能で終わり宝の持ち腐れとなります。

その才能があるかどうかはやってみないと分からないですし今現時点で3流のパフォーマンスしかなかったとしても秘めたる才能があれば超一流になれる可能性はあるという事です。まずは勇気を持って何事にも挑戦し、自身で向いていないと判断した場合は自身にあったものをしっかりと伸ばしてもう一段階上の自分にもなれます。

そして努力できるのも才能です。パフォーマンスや筋力の向上などの身体面も才能が影響しますし、努力や練習を一貫しておこなえるメンタル面も才能が影響します。その両方がうまく嚙み合わさってやっと才能が開花(発現)されるという事です。

自身の遺伝子とどう向き合うか

トレーニングに限らず勉強やスポーツ、仕事でも自分の限界を感じることは日常的にあるものです。そんな場合は一つの事に拘らず全く違った発想に転換させて良いでしょう。

例えばウエイトリフティングで限界を感じたらボディビル。もしくはボディビルより細くても評価されるベストボディジャパンやサマースタイルアワードなどのボディ系コンテスト出場を目指してトレーニングする。もう少し変えるとマラソンやトライアスロンなどの持久的競技に挑戦してみる。などトレーニングや運動は身体面、メンタル面にも好影響をもたらしますのでそういった効果を自身の限界を迎えた為に棒に振ってしまったら勿体ないですよね。

さらに遺伝子による体質は年月とともに変化します。例えばダイエットを行うにしても今は失敗してばかりですが年齢を重ねて食に対する行動や習慣などが変わることによって自身が無理だ!と感じていた事が意外と達成しやすくなっている可能性も充分にあります。

現時点では自身の運動能力関する可能性を推し量るものにスポーツ遺伝子検査もあり、当施設でも取り扱っています(こちらのリンクからどうぞ)。ただそのスポーツ遺伝子検査で自分が例えばボディビルで優勝出来る程筋肥大しやすい体質かはたまた金メダルが取れる程優秀な遺伝子を持っているかという指標にはならず、しいて言うならば持久系か瞬発系かというかなり大まかな参考になる程度です。

学校の部活でなどでも同じ練習でかなり伸びる子と努力してるのに全く伸びない子の差があるように例え体組成がほぼ同一で筋力も差がない状態で同時期に同じ内容でトレーニングを行なっても数か月後には大きな差が生まれます。運動部などに所属されていた人でしたら思い当たる節はあるでしょう。

その差が生まれるのは練習内容が各個人に合っている、合っていないという可能性ももちろんあります。そして才能があっても伸びる時期(個人の才能を発揮するタイミング)が違う可能性もあります。伸び方には各個人で大きな違いを持っています。

自身がトレーニングやその競技に向いている、向いていないかは長い年月をかけて色々な方法を試し真剣に取り組んでこそはっきりと解ります。その競技に向いているか、伸びしろはあるか、その練習(トレーニング方法)は合っているか、という事は努力しそれを継続していかなければ秘めた才能を知る術はありません。

ボディビルやフィジークで優勝出来る程の見た目の人は確かに言う事に説得力がありますし、同じことを行なえば同じ体になれるような気持にさえさせてくれます。私も学生時代からシルベスター・スタローンのトレーニングの真似ごとをよく行っていました。

ただ自身がどれだけトレーニングの伸びしろがあるかはかなり大きな個人差があり、伸びる伸びないかはマッチョな人が指導につくかつかないかではありません。かなり高齢者で足腰が立たない状態でも真っ当な理論で個人の適性を見極める目があればマッチョでカッコいい指導者に教えを乞うより自分の可能性を引き出せることでしょう。トレーナーの指導風景

上原投手や黒田投手などは高校時代に控え投手でも大学生時代に大きく伸び最終的にはメジャーリーグで活躍されました。いつどの時点で才能が開花されるかは何年も努力を重ねやっと判断できることです。そしてその才能を開花させる為に色々な方法を取り入れ自身が伸びると判断したものを積み重ねる事が重要となります。

ひとは遺伝的要因と環境的要因が重なり合って今の自分を作っています。いくら才能(遺伝的要因)が優れていてもそれを活かす場(環境的要因)が整っていないと才能は開花(遺伝子発現)しません。しっかりと自分の才能を開花させる為に楽しみながら前向きに自分の可能性を追求しましょう!

まとめ

このブログでは他人とは比較せず自身のトレーニング目標を決定しそれに向かってどのようなスタイルの(自身に合った)トレーニングを積み重ねるかという事が重要でその伸びは各個人大きな差があり、その個人差を比較するのではなく以前の自身と比較し自分にどのような成長があるかをしっかりとフィードバックしながらトレーニングを組み立てる事をおススメしています。

遺伝的要因のよって差が出たりすることを不公平ととったりもしかすると差別的感覚に囚われたりする事があるかもしれませんが現実的にそのような差は世の中に多々あります。上述の部活の練習や学校の授業でも同じように同じ先生から同じ内容の授業を受けても取れる点数は各自バラバラです。しかし算数はA君に到底及ばなくても国語や英語は同等以上の点数がとれる可能性があったりもします。体育だったら逆に突き放せるかも知れません。

あることでひとより劣っていてもやり方や別の視点で捉えると優れている可能性も充分にあります。自身の遺伝子の問題だからと諦めるのではなく自分の可能性を最大限に引き出す努力や探索を行ってみてください!比較対象は他人ではなく今日や昨日までの自分。今の自分が自分史上最高の自分であってください。

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